「原付は維持費が安い」とよく言われる。だが、具体的に年間いくらなのかを実データで書いている記事は少ない。カタログ燃費で計算した見積もりばかりで、実際に何年か乗った人間の数字が出てこない。
筆者は大学入学時にホンダ・タクト(50cc)を買い、通学に使って4年目になる。走行距離はまもなく2万km。給油のたびに燃費を記録し、オイル交換も自分でやってきたので、かかった金額はほぼ全部わかる。
この記事では、その実データをもとに原付の年間維持費を公開する。購入時に立てた見積もりが実際どれだけズレたか、そして大学生がいちばん損をしやすい任意保険についても書く。
なお「そもそもバス・電車と比べて得なのか」は別記事にまとめてある。通学手段として原付を検討している人はそちらを先に読んでほしい。
【結論】年間の維持費は約34,000円だった
先に結論を出す。筆者の場合、原付の維持費は年間でこうなっている。
| 項目 | 年額 | 内訳 |
|---|---|---|
| 軽自動車税 | 2,000円 | 50cc以下は一律 |
| 自賠責保険 | 約4,280円 | 2年契約8,560円を1年あたりに換算 |
| 任意保険 | 10,360円 | 購入時に見込んでいた年額(参考値・後述) |
| ガソリン | 約15,000円 | 走行単価3.01円/km × 年約5,000km |
| オイル交換 | 約2,500円 | 年2〜3回・自分で交換 |
| 合計 | 約34,000円 |
月に直すと約2,800円。4年間このくらいで乗ってきた。
なお任意保険の10,360円は参考値だ。筆者は親の自動車保険の特約に乗っているため、この金額を自分の財布から払っているわけではない。購入時に維持費を見積もったときの数字をそのまま使っている。保険料は条件で大きく変わるので、この額を鵜呑みにせず自分の条件で確認してほしい。
内訳を見ると、ガソリンと任意保険の2つで全体の75%を占めている。税金・自賠責・オイル交換は合計しても年9,000円に届かない。つまり維持費を下げたいなら、見るべきところは最初から決まっている。

ちなみにこのスクリーンショットは、筆者が開発した燃費管理アプリ「FuelLens」のものだ。
【固定費】税金と自賠責は、乗り方に関係なく決まる
軽自動車税は年2,000円
50cc以下の原付にかかる軽自動車税は年2,000円。毎年4月1日時点の所有者に課税され、5月ごろに納付書が届く。
月に直せば167円で、正直ここを気にする意味はない。
【重要】自賠責は2026年11月1日に値上げ。原付の上げ幅は全車種で最大
自賠責保険(強制保険)は13年ぶりの引き上げが2026年11月1日から実施される。ニュースでは「全車種平均6.2%の値上げ」と報じられている。
だが、原付の上げ幅は平均よりはるかに大きい。損害保険料率算出機構が公表した車種別の改定率(2年契約)を並べるとこうなる。
| 車種 | 現行 | 改定後 | 改定率 |
|---|---|---|---|
| 一般原動機付自転車 | 8,560円 | 9,630円 | 12.5% |
| 軽自動車(検査対象車) | 17,540円 | 18,660円 | 6.4% |
| 自家用小型貨物自動車 | 20,340円 | 21,430円 | 5.4% |
| 自家用乗用車 | 17,650円 | 18,560円 | 5.2% |
原付は全車種のなかで最も値上げ率が高い。自家用乗用車の2倍以上だ。3年契約ならさらに大きく、10,170円→11,480円の12.9%になる。
「平均6.2%」という見出しだけ見て安心していると、原付ユーザーは想定より多く払うことになる。
保険始期が10月31日までなら現行料率、11月1日以降は改定後の料率になる。原付の差額はこうだ。
| 契約期間 | 現行(〜2026/10/31始期) | 改定後(2026/11/1始期〜) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 1年 | 6,910円 | 7,730円 | +820円 |
| 2年 | 8,560円 | 9,630円 | +1,070円 |
| 3年 | 10,170円 | 11,480円 | +1,310円 |
| 4年 | 11,760円 | 13,280円 | +1,520円 |
| 5年 | 13,310円 | 15,030円 | +1,720円 |
※沖縄県・離島を除く
もし更新が近いなら、10月中に済ませたほうがいい。 長期契約ほど差額が大きく、5年契約なら1,720円変わる。
なお、契約期間が長いほど1年あたりの単価は下がる。5年契約なら1年あたり2,662円で、1年契約(6,910円)の半額以下になる。
筆者は「2年契約」を選んだ。理由は乗る期間が決まっているから
筆者の自賠責は今年10月が更新だ。ここで少し悩んだ。
進学の都合で、この原付に乗るのは2028年3月までと決まっている。 更新から数えて17ヶ月しかない。
長期契約が得なのは分かっているが、5年で契約すれば43ヶ月ぶんが余る。かといって1年契約を2回繰り返すと、6,910円×2=13,820円で2年契約(8,560円)より5,000円以上高い。
結論として2年契約にした。17ヶ月使って7ヶ月ぶんが余る形になるが、自賠責は廃車・譲渡のときに解約すれば残り期間に応じた返戻金が受け取れるので、丸損にはならない。
学生の場合、「いつまで乗るか」が卒業や就職である程度決まっている。その期間に一番近い契約年数を選ぶのが素直だと思う。
【任意保険】大学生がいちばん損をしているのはここだ
維持費の話で本当に効くのはこの章だ。
任意保険は名前こそ「任意」だが、実質的には強制だと思っている。事故を起こしたときの賠償を全額自腹で払える学生はいない。
筆者はファミリーバイク特約に乗っている
筆者は実家暮らしなので、親の自動車保険に「ファミリーバイク特約」を付けてもらっている。つまり原付の任意保険として、自分で別に契約はしていない。
上の維持費表に入れた年10,360円は、購入時に維持費を見積もったときの数字だ。あくまで参考値として見てほしい。 保険料は車種・年齢・等級・補償内容で大きく変わるので、他人の金額を自分に当てはめてもあまり意味がない。金額そのものより、どの入り方を選ぶかのほうがずっと効く。
ファミリーバイク特約は、自動車保険に付ける追加の補償で、契約者とその家族が125cc以下のバイクに乗るときをカバーする。保険料は親の契約の一部として払われるため、原付側の固定費としては見えなくなる。
学生にとっての利点は、自分の年齢で保険料が決まらないことだ。年齢条件が厳しくなる20歳前後でも、親の契約に乗る形なら影響を受けにくい。
「親の等級が下がるのでは」という心配は要らない
この特約を親に頼むとき、いちばん気になるのがこれだと思う。自分が事故を起こして、親の保険の等級が下がったら申し訳ない、と。
結論を言うと、下がらない。 ファミリーバイク特約から保険金が支払われた事故は「ノーカウント事故」として扱われ、翌年度の等級に影響しない。保険を使わなかった場合と同じ扱いになる。
これは複数の保険会社が公式に明記している。頼む前にこれを知っておくと、話が通しやすいはずだ。
実家を離れていても対象になることが多い
一人暮らしの学生でも、別居の未婚の子であれば対象としている保険会社が多い。「実家を出たから使えない」と決めつけて単独契約に走る前に、親が入っている保険会社の条件を確認したほうがいい。
ただし条件は会社ごとに違うので、ここは必ず現物を確認すること。
注意点: 自分のバイクは直してもらえない
いいことばかりではない。ファミリーバイク特約は相手への賠償が中心で、車両保険が付かない。転倒して自分の原付が壊れても、修理費は出ない。
とはいえ原付の車両価格を考えれば、割り切れる範囲だと思う。
実家の保険が使えないなら、比較しないと確実に損をする
親が車を持っていない、対象外だった、という場合は単独で契約するしかない。
そしてここが分かれ目で、バイクの任意保険は会社によって保険料の差が大きい。年齢条件が厳しい20歳前後はとくに差が開く。1社だけ見て決めると、比較した場合より年数千円〜1万円以上高く払うことになりかねない。
上の内訳表を見てのとおり、任意保険はガソリン代と並ぶ二大支出だ。オイル交換を自分でやって年数千円を浮かせるより、ここを一度見直すほうが金額のインパクトは大きい。
一括見積もりは無料で数分で終わる。原付を買う前でも、すでに乗っていても、一度通しておいて損はない。
【ガソリン】実燃費55.75km/L、走行単価は1kmあたり3.01円
ここは実データがある。納車から3年間、給油のたびに記録した結果がこれだ。
| 平均燃費 | 55.75 km/L |
|---|---|
| 平均走行単価 | 3.01 円/km |
カタログのWMTCモード値が58.4km/Lなので、達成率は約95%。カタログ燃費にここまで近い乗り物はそう多くない。
1km走るのに約3円という数字は、通学距離に当てはめるとわかりやすい。
| 片道距離 | 1日のガソリン代 | 1ヶ月(20日) |
|---|---|---|
| 5km | 約30円 | 約600円 |
| 10km | 約60円 | 約1,200円 |
| 15km | 約90円 | 約1,800円 |
【誤算1】走行距離は見積もりより少なかった
ここで正直に書いておきたいことがある。
購入当時、筆者は片道15km・週5日・月4週で月600km(年7,200km)という前提で維持費を計算していた。ところが実際の走行距離は4年で約2万km、年に直すと約5,000kmだ。見積もりの7割しかない。
理由は単純で、休講や長期休暇があり、雨の日は乗らず、オンライン授業の日もあったからだ。カレンダー通りに毎日乗るわけではない。
これは維持費の計算をする人には朗報で、ガソリン代の見積もりは多めに出がちということでもある。実績ベースだと年約15,000円で済んでいる。
燃費の詳細なデータ(3年分の給油記録の全件)は別記事に置いてある。
【メンテナンス】オイル交換を自分でやると、年2,500円で済む
原付は乗りっぱなしにできない。最低限やるべきなのがオイル交換だ。
筆者は2,000kmごとに交換している。年約5,000kmなので、年2〜3回のペースになる。
ここで効くのが自分でやるかどうかである。
| 交換方法 | 1回あたり | 年2.5回 |
|---|---|---|
| バイク屋に頼む | 2,000〜3,000円 | 5,000〜7,500円 |
| 自分でやる(純正オイル) | 約1,240円 | 約3,100円 |
| 自分でやる(社外4L缶) | 約810円 | 約2,000円 |
年間で3,000〜5,000円の差が出る。作業自体は難しくないので、やらない理由はあまりない。
【誤算2】タイヤ交換で、自分でやろうとして余計に払った話
4年乗って、定期メンテ以外で発生した出費はリアタイヤの交換1回だけだった。バッテリーもブレーキも、いまのところ交換していない。
問題はその1回の中身である。
15,000kmを超えたあたりからリアタイヤを意識しはじめ、実際に交換したのは17,000kmのときだった。そのころには溝がほぼ残っていない、はっきりツルツルの状態になっていた。
オイル交換が自分でできたので、タイヤも自分で替えられるだろうと思った。タイヤを楽天で買い、タイヤレバーとリムプロテクターのセットも揃えた。
リアアクスルナットが、まったく緩まなかった。
体重をかけても動かない。ここで引き返せばよかったのだが、「工具が足りないだけだ」と考えて電動インパクトレンチ(中古)まで買い足した。それでも緩まなかった。
結局バイク屋に持ち込んだ。エアインパクトレンチで一瞬だった。
そして痛かったのが、持ち込みは工賃が2倍かかるという点だ。店で買ったタイヤを店で組むのと、自分で用意したタイヤを持ち込むのとでは、工賃の設定が違う。
かかった金額はこうなった。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| タイヤ(楽天の安いもの) | 2,600円 |
| タイヤレバー・リムプロテクター等セット | 1,300円 |
| 電動インパクトレンチ(中古) | 5,000円 |
| 交換工賃(持ち込みのため通常の2倍) | 7,000円 |
| 廃タイヤ処分料 | 500円 |
| 合計 | 16,400円 |
このうち、工具6,300円と工賃の差額3,500円、合わせて9,800円は、自分でやろうとしなければ払わずに済んだ金額である。タイヤ代を安く上げたつもりが、その4倍近くを余計に払っていたことになる。
教訓は2つある。
ひとつは、オイル交換とタイヤ交換は難易度がまるで違うということ。オイル交換は工具さえあれば手順どおりで終わる。タイヤは、その前段のアクスルナットで止まる可能性がある。DIYの入口として並べて考えないほうがいい。
もうひとつは、固く締まったナットに対して、電動インパクトは万能ではないということだ。プロが一瞬で緩めたのはエアインパクトで、道具の力が単純に違った。「工具を買えば解決する」と考えて買い足すのは、いちばん高くつく判断だった。
なお、リアタイヤの交換時期の目安としては17,000kmというのが筆者の実績になる。15,000kmを超えたら残り溝を見はじめるのがよさそうだ。
【4年間の総額】初期費用を入れると、実際いくらだったのか
維持費だけでなく、買ったときの費用も足して総額を出しておく。2022年9月の納車時にかかったのはこれだ。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 車体価格(タクト・ベーシック) | 179,300円 |
| 自賠責(4年) | 12,300円 |
| ヘルメット | 15,000円 |
| グローブ | 3,000円 |
| 諸費用(登録・納車前点検) | 10,400円 |
| 合計 | 220,000円 |
※ 自賠責は2022年当時の料率(2021年4月〜2023年3月始期)
ここに4年ぶんの維持費を足す。ただし自賠責は初期費用に4年分がまとめて入っているので、二重に数えないよう、維持費表から自賠責を抜いた年29,860円で計算する。4年で約119,400円だ。
220,000円 + 119,000円 + タイヤ交換16,400円 = 総額およそ356,000円。走行距離約2万kmで割ると、1kmあたり約17.8円で乗ってきた計算になる。
ガソリン代だけなら1kmあたり3円だが、車体価格まで含めた実際のコストはその6倍近いということだ。とはいえ初期費用の大半は買ったときの一括なので、乗る年数が長いほど1kmあたりは下がっていく。4年乗った時点で、220,000円の初期費用はかなり薄まってきている。
まとめ
4年・約2万km乗って分かったことを整理する。
- 維持費は年約34,000円(月約2,800円)
- そのうちガソリン代と任意保険で75%
- 税金・自賠責・オイル交換は合計しても年9,000円に届かない
- 自賠責は2026年11月1日に値上げ。原付の上げ幅12.5%は全車種で最大(平均は6.2%)。更新が近いなら10月中に
- ファミリーバイク特約が使えるなら、まずそれを検討する。親の等級は下がらない
- タイヤ交換をDIYしようとして9,800円を余計に払った。オイル交換とは難易度が別物
- 車体価格まで入れた総額は約356,000円、1kmあたり約17.8円
原付の維持費が安いのは事実だ。ただし「安いから何も考えなくていい」わけではない。保険の入り方だけは最初に調べたほうがいい。ここだけで、他の項目を全部合わせたのと同じくらいの差が出る。
そもそも原付を買うべきかどうか、バス・電車と比べた損得は別記事にまとめてある。
参考文献







コメント