「RadeonでAIは動くのか」——数年前なら、答えは「動くには動くが茨の道」だった。
だが2026年のいま、Windows上のRadeonで画像生成もローカルLLMも普通に動く。 筆者は RX 9070 XT 16GB で、Stable Diffusion も Ollama も日常的に回している。
問題は、情報が散らばっていることのほうだ。 ROCmとVulkanのどちらを使うのか、どのバージョンを入れるのか、16GBで足りるのか。この記事では、これまで当ブログで実測してきた内容を1本にまとめて、読む順番まで示す。
なお、当ブログのRadeon関連記事はすべて同じマシン(RX 9070 XT 16GB)での実測である。伝聞や公式スペックの引き写しではない。
【結論】決めることは2つだけ
Radeonで生成AIを始めるとき、迷う点はこの2つに集約される。
1つ目は「何をやりたいのか」。 画像生成とローカルLLMでは、入れるものも詰まる場所も違う。
2つ目は「ROCmとVulkanのどちらを使うのか」。 そしてこれは、1つ目の答えによって変わる。
| やりたいこと | 使うバックエンド |
|---|---|
| 画像生成(Stable Diffusion / ComfyUI) | ROCm一択 |
| ローカルLLMのチャット | Vulkanが速い(+23〜45%) |
| ローカルLLMで長文を読ませる | ROCmが速い(+16〜76%) |
画像生成をやるだけならVulkanは考えなくていい。 悩む必要があるのはLLM側だけである。根拠は後述する。
【早見表】あなたが読むべき記事はどれか
先にここを見てほしい。全部読む必要はない。
| やりたいこと | 読む記事 | 種類 |
|---|---|---|
| 画像生成をこれから始める | ROCm 7.2で環境構築 | 手順 |
| すでに動いているが、遅い | ComfyUIを高速化する4つの設定 | 手順 |
| ROCmのバージョンで速度がどう違うか知りたい | 生成速度ベンチマーク | 実測データ |
| ROCm 7.1.1 の環境を組みたい | 旧バージョンの手順 | 手順 |
| ローカルLLMをこれから始める | ローカルLLM完全ガイド | 手順 |
| VulkanとROCm、どちらにするか決めたい | VulkanとROCm実測比較 | 実測データ |
| どのサイズのモデルまで載るか知りたい | Gemma 4を5サイズ実測 | 実測データ |
【横断】RX 9070 XT 16GBで、何ができて何ができないか
16GBという枠が、できることの境界を決める。 これまでの実測を1枚にまとめる。
| やること | 可否 | 実測値 |
|---|---|---|
| Stable Diffusion 1.5 / SDXL | ○ | ROCm 7.1で実用速度 |
| FLUX.1 | ○ | ROCm 7.11がいちばん速い |
| ローカルLLM 12Bまで | ○ 快適 | VRAMに全部載る |
| ローカルLLM 26B | △ 実用 | VRAM超過で 29.5 tok/s |
| ローカルLLM 31B | × 実用外 | 4.0 tok/s。ここだけ崖になる |
26Bと31Bの間に崖があるのがこのGPUの特徴で、パラメータ数からは予想できない。MoEかDenseかで、溢れたあとの落ち方が7.4倍違うためだ。詳細はGemma 4の実測記事に書いた。
「16GBで足りるか」の答えは、LLMのサイズで決まる。 画像生成しかやらないなら16GBで困る場面はほとんどない。
【横断】ROCmとVulkanの使い分け
ローカルLLMをやるなら、ここが最初の分かれ道になる。同じマシン・同じモデル・同じ日に測った結果がこれだ。
| 観点 | 速いほう | 差 | 例外 |
|---|---|---|---|
| トークン生成(チャットの体感) | Vulkan | +23〜45% | gpt-oss:20bはROCmが+15% |
| プロンプト処理(長文の読み込み) | ROCm | +16〜76% | gpt-oss:20bはVulkanが2.2倍 |
チャット中心ならVulkan、長文を読ませるならROCm。 ただし gpt-oss:20b だけは両方とも逆になる。カーネル実装とモデル構造の相性としか言いようがなく、最後は自分の常用モデルで測るしかない。
測り方も含めてVulkanとROCmの実測比較にまとめてある。
なお画像生成ではこの悩みは発生しない。ComfyUIはROCm一択である。
【画像生成】Stable Diffusion / ComfyUI を動かす
まず環境を作る → ROCm 7.2
いちばん新しい手順がこれだ。これから始めるなら、ここから読めばいい。
WSL2を使わず、Windowsネイティブで動かす手順である。
ROCm 7.1.1 で組みたい場合 → 旧バージョンの手順
すでに7.1.1で運用している、あるいは7.2で問題が出たときの退避先として残してある。
これから始めるなら7.2のほうを読んでほしい。
遅いと感じたら → 高速化の4設定
導入しただけのデフォルト状態では、Radeonの性能を使い切れていない。 MIOpenの有効化、VAEまわりの設定、起動オプションの4点で変わる。
バージョンで速度がどう変わるか → ベンチマーク
ROCm 6.4 / 7.1 / 7.11 をSD1.5・SDXL・FLUX.1で比較した。
6.4は7系の2〜3倍遅いので、古い記事を見て6.4を入れないこと。常用は7.1、FLUX.1中心なら7.11という結論だった。
この記事は7.2が出る前の計測である。 7.2を含めた比較は取り直していないのであしからず。
【ローカルLLM】Ollama / LM Studio を動かす
まず動かす → 完全ガイド
OllamaとLM Studioの両方を、Windows上のRadeonで動かす手順。モデルの取得から最初の応答までを通しで書いてある。
バックエンドを決める → VulkanとROCmの実測比較
上の横断表の根拠になっている記事である。測り方も書いてあるので、自分のモデルで再現できる。
どのサイズまで載るか → Gemma 4を5サイズ実測
E2B / E4B / 12B / 26B / 31B の5サイズを全部動かした。
ダウンロードサイズとVRAM消費は一致しないという、実際に動かさないと分からない話も書いた。
【つまずきポイント】Radeonで詰まるのは、だいたいこの3か所
記事をまたいで同じ罠に何度もハマったので、先に共有しておく。どれも「エラーが出ない」のがたちが悪い。
1. 古いROCmを入れてしまう。 検索で上位に出る記事には ROCm 6.4 世代のものが混ざっている。 6.4は7系と比べて2〜3倍遅い。動いてしまうので気づきにくい。バージョンだけは確認して入れること。
2. 内蔵GPUを掴んでいる。 Ryzenの内蔵グラフィックスがあるマシンで、 LM StudioのVulkanランタイムがdGPUではなく内蔵GPU側でモデルを実行してしまうことがある。 症状は「エラーは出ないのに異常に遅い」。筆者の環境では本来107 tok/s出るところが5.3 tok/sだった。 タスクマネージャーでRX 9070 XTが暇をしていたら、これを疑う。
3. VRAMに前のモデルが残っている。 Ollamaは使い終わったモデルを既定で5分間VRAMに残す。 この状態で別のモデルを測ると大幅に遅くなる。ollama ps で空を確認してから測ること。
「Radeonは遅い」と言われる原因の一部は、この3つを踏んだままの計測である。
【ハードウェア】これから買うなら
ここまでの記事は、すべてこのカードで測っている。
16GBという容量が、そのまま「どのモデルまで載るか」を決める。 画像生成が主目的なら十分に戦えるカードだ。LLMで26Bより上を常用したいなら、VRAMの大きいカードを検討する段階になる。
【まとめ】読む順番
画像生成をやりたいなら:
- ROCm 7.2で環境構築 で動かす
- 高速化の4設定 で速くする
- 余力があれば ベンチマーク でバージョンを選ぶ
ローカルLLMをやりたいなら:
- 完全ガイド で動かす
- VulkanとROCmの比較 でバックエンドを決める
- Gemma 4の実測 でモデルサイズを決める
Radeonは、もう「AIには向かない」GPUではない。 ただし情報がNVIDIA前提で書かれていることが多く、そこで詰まる人が多い。この記事が最初の地図になれば幸いである。









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